世界カカオ紀行② 〜カカオ文化が息づく島、フィリピン〜

2016.10.04 #from Cacao Farm

フィリピンは7,000以上の島々から成る島国です。

ルソン島に次いで2番目の大きさを誇るミンダナオ島と、その北部に浮かぶボホール島が、フィリピンのカカオ生産の中心地となっています。特にミンダナオ島のダバオ地方にプランテーションが集中し、国全体の約8割の生産量を上げています。  

ミンダナオ島には小規模農家が点在し、カカオ栽培・発酵・乾燥を行う農業協同組合が多数あります。

地域によっては「セントラルステーション(中央施設)」を設け、周辺の農園のカカオを集めて「発酵」を手がけています。

今はこうした運営がなされ始めているカカオ農園ですが、フィリピンのカカオ栽培の道のりは、世界経済や国内政策に激しく翻弄された、苦難に満ちた歴史でした。  

 

カカオ栽培の受難の歴史

16世紀末、スペインの植民地時代にプランテーションが造営され、カカオのプランテーションとしては世界でも比較的早い段階から栽培に着手をしました。

しかし、1970年代に入り、カカオの取引価格が暴落。多くの農家がココナッツへの作付けの変更を余儀なくされました。 さらに追い打ちをかけるように、1988年の「包括農地改革法(CARL)」制定で、大規模農園が小規模農家に分割され、カカオの栽培技術の伝承が途絶えます。病虫害に対応できず収穫量が激減し、販売先の確保にも苦慮するようになり、多くの農家でカカオ栽培が放棄される事態に陥りました。  

 

ところが近年になり、ココナッツ産業の農業収入が低価格化したことで、再び積極的にカカオを栽培していく気運が芽生えはじめています。

2011-16 年には、農家の収入向上を目指した「高価作物開発プログラム(HVCDP)」と、森林面積の拡大を目指した「国土緑化プログラム(NGP)」の中で、新規カカオの植林目標を掲げ、カカオ栽培を促進していることも追い風となりました。

 

外資系大手チョコレート会社が技術・設備のサポートをし、行政もカカオ豆の加工・高品質化に必要な「発酵箱」や「ソーラードライヤー」を提供することで、生産と品質向上の土台が着々と整い、魅力的なカカオ産地として復活を遂げつつあります。  

 

フィリピン国民の朝食、チョコレート粥!?

フィリピンは、約9000万人超の人口を擁し、国内のカカオの消費も旺盛です。

カカオ生産国で、伝統的にチョコレートを食べたりドリンクを飲む習慣があるのは、世界的にも珍しいケースと言えます。カカオ栽培の歴史が比較的長いため、人々の生活にカカオとチョコレートの文化が根づいているのです。そのため、カカオ生産国でありながら国内で供給が追いつかない事態にも陥り、カカオ豆を輸入しているという珍しい状況も生まれています。  

 

カカオ豆をすりつぶして円筒状に固めた「タブレア」は、地元のどこのスーパーでも見られるフィリピンの日常的な食品です。ドリンクとして飲むだけではなくもち米にタブレアを溶かし、ホットチョコレートをかけて食べる庶民の朝食「チャンポラード」(チョコレート粥)も古くから親しまれています。

このように、チョコレートを日常的に食べる習慣があることは、生産者が「カカオの味わいの変化を感じ取る」ことができる優位な環境にあると言え、時間をかけてさらに品質を上げていける余地があると考えています。    

 

なめらかなチョコレート系の味わいのカカオ  

 

フィリピンのカカオ豆の品質は、まだまだ発展途上です。

農園ごとの栽培管理や発酵管理で、品質にバラつきがあることは否めません。

しかし、Minimalが直接取引しているカカオ豆は、しっかりとした栽培・発酵の管理がなされています。見た目もクリオロ種系のような原種型の比較的色素の薄く丸い形状の豆が多く見られ、まろやかで扱いやすいです。

カカオ豆にはなめらかなチョコレート系を中心に赤いフルーツ系のアクセントがあり、十分にポテンシャルを感じることができます。  

Minimalで取り扱っているフィリピンのカカオ豆は、同じ農場の同じ木々から同じタイミングで採れたカカオ豆をMinimal独自に実験的に発酵を行なったものです。発酵の影響を強く受け、元々は同じカカオ豆でも全く味わいの異なる製品がラインナップされていますので、ぜひ食べ比べて「発酵」がもたらす影響の大きさを体感してみてください。  

 

フィリピンのカカオ豆は、時間経過とともに特徴が刻々と変化し、発酵パターンによっては特徴が弱まる傾向もあるなど非常に取り扱いの難しい性質を持つため、まだまだMinimalでも格闘中です。数多くの発酵実験を行いながら、農園や産地側の生産者と継続的なコミュニケーションを取っていきたいと考えています。今後も学び続け、試行を繰り返しながらフィリピンのカカオ豆と一緒に成長していきたいと思います。    

 

フィリピン共和国

○位置:東南アジア

○人口:9,230万人

○年間カカオ生産量:5,500t(世界23位)※2014/15推定 ICCO  

出典:

JIFPRO『2016/06/business-model_cacao.pdf』

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